漏電火災のメカニズム

漏電火災のメカニズム

絶縁劣化

火災のメカニズムとして、絶縁体にストレスが与えられると、劣化が進み、炭化すると考えられます。 継続的電圧印加により漏れ電流成分の増加をもたらし、劣化が生じることになります。次に、表面が 汚染して増加すると、電極間で局部的な放電が生じるため、そこに炭化が起こり、トラック(発火)を生じ火災へと発展することがあります。トラッキング現象と言われています。

劣化診断

劣化判断は、抵抗値を測定することや、数mAの漏れ電流測定によってある程度まで可能となります。
電気製品や絶縁体の耐久性能や抵抗値を測定する方法として、絶縁耐力試験・絶縁抵抗試験等が実績ある試験といえます。絶縁耐力試験は、高圧回路で実施しており、絶縁抵抗試験は、直流500V等を印加する方式です。これらの試験では、高い電圧を測定対象物に印加することで、測定対象物に負担を与えます。また、通電でないために運用時の劣化度合いや、負荷を含めた全体を把握することができません。
最近では、電路の長さによって発生するIgc(等価対地静電容量成分に起因する電流分)により、感電・火災の原因となるIgr(等価対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流)を的確に検出することが困難となっています。更に、高調波成分や高周波ノイズなどが、Igcを3倍~8倍に増幅させるため、危険な抵抗分の漏洩電流の検出が更に困難になっています。

Igr

劣化診断では、通電状況でIgrを的確に検出し、増減管理を行っていくことが必要です。
静電容量やノイズ・高調波の影響を受けにくいIgrで管理することにより、ノイズ等の影響で安全なのに運用ができなくなることや、危険なのに検出できないことを回避していくことが重要となります。
異調波などを注入して環境に影響を与えることなく、通電状況で的確にIgrを測定する方式が理想です。

ショートとは…

火災の原因として「電源プラグ部分におけるショート」が、時折報じられます。つい先ごろも大きな事故の原因として報じられたことをご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

このような火災現場に漏電遮断器が設置されていたならショートした時点で遮断していたと考えられます。しかし、それでは火災は防げません。ショートは、漏電が継続していて、その電路が燃え始め、被覆が劣化して火災が進んでから発生します。

つまり、ショートという現象が発生する以前から、等価対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流Igrが発生していたことは容易に想像できます。

漏電遮断器では防げない火災も、「事前にIgr値の把握や増減を管理する予兆管理を行えば防ぐことができるのに」と、歯痒い思いを持っています。

Igr値の高い精度と追従性を備えた方式での管理の必要性を発表してかなり長い時間が経過しています。
専門分野の方々はもちろん、一般の方々にも、Igr値管理としてTrue R方式の必要性を分り易く解説し、繰り返し説明して理解を求めていくことが、まだまだ大切だと考えています。